エステ業界の面接で「運動経験」を聞かれる理由

エステ業界の面接で「運動経験」を聞かれる理由

最終更新日 2026年10月27日 by wardon

「先生、私、部活をしていなかったんですけど、面接で不利になりますか」。
エステサロンの面接を控えた学生から、毎年のように受ける相談です。

美容専門学校で就職指導を担当している柚木沙織です。
以前は都内の大手エステサロンで6年間エステティシャンとして働き、店舗のトレーナーとして新人の採用面接に同席したこともあります。

先に答えを書いておくと、運動経験がないことだけで不合格になることはまずありません。
面接官が知りたいのは、運動そのものより、その話から見える「働く体」と「続ける力」です。

この記事では、運動の話題が出る理由と、経験がない人の答え方、面接までにできる準備をまとめます。

運動経験は話の流れで聞かれることが多い

求人メディアや専門学校が公開しているエステの面接対策をいくつも読み比べると、よく挙がるのは志望動機、なぜこのサロンか、長所と短所、目指すエステティシャン像といった質問です。
「運動経験はありますか」と単独で聞かれるケースは、そう多くありません。

実際には、次のような流れで運動の話になります。

  • 学生時代に力を入れたことを聞かれ、部活の話になる
  • 「体力に自信はありますか」と聞かれる
  • 趣味や休日の過ごし方を聞かれ、運動の習慣に話が広がる

大手サロンの選考を紹介しているサイトの中にも、エステ業界の面接で聞かれやすい質問として運動やスポーツの経験を挙げているものがあります。
たとえばたかの友梨で社員として働くための選考の流れをまとめたページでは、アルバイト経験、なぜエステ業界を選んだのかと並んで、運動経験が取り上げられています。

質問の形はさまざまでも、面接官が確かめたいことは共通しています。
次の章で、その中身を見ていきます。

面接官が運動の話から確かめたいこと

立ち仕事と手を使う施術についていけるか

厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)は、エステティシャンの仕事について、ほとんどが立ち仕事で、手や腕をかなり使うため、ある程度の体力が必要だと説明しています。

立ち続ける仕事の負担については、国も注意を促しています。
厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」では、サービス業などの立ち作業は腰に過度の負担がかかる姿勢になる場合があるとし、おおむね1時間に1、2回は小休止を取ることが望ましいとしています。

エステは手技が中心の仕事です。
たかの友梨ビューティクリニックの採用サイトには、同社の世界のエステメニューの8割はハンドトリートメント、つまり機械ではなく手で行う施術だと書かれています。
同じ採用サイトの座談会では、先輩社員が「体力仕事の面も大きい」と話しています。

私も新人のころは、ボディの施術が続いた日の夜、腕が重くて髪を乾かすのがつらかったのを覚えています。
面接官が体力を気にするのは、この感覚を知っているからです。

自分の体を整える習慣があるか

エステティシャンは、お客様に美容や健康のアドバイスをする立場でもあります。

厚生労働省がエステティック業向けにまとめた職業能力評価基準のマニュアルは、日本エステティック協会などの関係者が加わって作られたものです。
その評価項目には、日頃から健康や美容の維持・向上に取り組んでいることや、食事や運動など日々の生活の改善についてお客様にアドバイスすることが含まれています。

運動の話を聞くと、その人が自分の体をどう扱っているかが見えてきます。
毎朝ストレッチをしている、週末は歩くようにしている、といった小さな習慣でも、立派な答えになります。

長く続けられそうか

リクルートのホットペッパービューティーアカデミーが2026年に公表した「美容就業実態調査」では、エステティシャンを辞めた人が挙げた理由(複数回答)として、「仕事内容がハードだった」が18.4%、「体調を崩した・体力的に厳しいと感じた」が12.4%でした。

採用する側にとって、入社してすぐに体がついていかなくなるのは避けたい事態です。
部活を最後まで続けた話や、アルバイトで立ち仕事を続けた話は、「この人は慣れるまで踏ん張れそうだ」という安心材料になります。

働く時間帯も関係しています。
たかの友梨ビューティクリニックの新卒募集要項では、サロン勤務の休日は月9〜10日で、土日祝日は基本的に出勤と書かれています。
お客様が多い週末に働き、平日に休む生活です。
生活のリズムが変わっても体調を崩さずにいられるかどうかも、面接官は気にしています。

チームの中でどう動けるか

就職情報サイトのリクナビは、部活の経験からは継続力やストレスへの強さ、チームの中での役割意識などが分かると解説しています。
これはエステの面接でも同じです。

サロンの仕事は、施術だけで終わりません。
予約の調整、ベッドメイク、タオルの準備、次のお客様のお迎えまで、スタッフ同士で声をかけ合って回しています。
部活で先輩や後輩と動いた経験は、こうした場面での立ち回りを想像してもらう手がかりになります。

運動経験がない人の答え方

運動部の経験がなくても、心配はいりません。
面接官が見ているのは「体を動かす仕事に向き合う姿勢」なので、別の経験に置き換えて話せば十分に伝わります。

自分の経験伝えられること
飲食や販売のアルバイト長時間の立ち仕事に慣れている
文化部(吹奏楽、演劇など)練習を続ける力、仲間との協力
毎日の通学で長く歩いていた基礎的な体力がある
ストレッチやヨガの習慣自分の体を整える意識がある
家事や家業の手伝い体を動かすことをいとわない

学生と面接練習をするときは、次のような答え方を一緒に考えています。

部活の経験がない場合の例です。

「学生時代は部活に入っていませんでしたが、カフェのアルバイトを3年間続けました。
1日6時間ほど立ちっぱなしの日も多かったので、立ち仕事には慣れています。
エステの施術は手や腕も使うと聞いているので、今は毎朝ストレッチをして体を整えています」

文化部だった場合の例です。

「吹奏楽部で3年間、毎日練習を続けました。
運動部ではありませんが、楽器を持って長時間立って演奏することもあり、体力はついたと思います。
地道に練習を積み重ねる力は、技術を身につけるときにも生かせると考えています」

どちらも、事実を話したうえで、エステの仕事にどうつなげるかを添えています。
話を盛る必要はありません。
経験を偽ると、入社後の自分を苦しめることになります。

体力に自信がない場合も、「自信がありません」で終わらせず、「体力をつけるために今これをしています」と準備の話につなげてください。

面接で避けたい答え方

面接練習で、学生がよくやってしまう答え方もあります。

  • 「体力には自信があります」だけで、根拠となる経験を話さない
  • 運動部の実績を長く話し、エステの仕事とのつながりに触れない
  • 「大丈夫です」と言い切り、仕事の大変さを知らない印象を与える

体力を前に出しすぎるのも考えものです。
美プロ(Zenken株式会社が運営する美容業界の求人サイト)の面接対策記事では、ノルマがなく丁寧な接客を大切にしているサロンに、運動部で培った体力でノルマをこなしたいと伝えるのは雰囲気に合わない、という例が紹介されています。
受けるサロンが何を大事にしているかを調べたうえで、話す内容を選んでください。

サロンのタイプで体の使い方は変わる

同じエステティシャンでも、担当する施術によって体の使い方はかなり違います。

サロンのタイプ体の使い方面接で伝えたいこと
ボディ・痩身中心全身を使う手技が長く続く立ち仕事や力仕事の経験、体力づくりの習慣
フェイシャル中心細かい手の動きと同じ姿勢を保つ時間が長い集中力、手先を使う作業の経験
脱毛中心機器を扱いながら施術件数をこなす段取りのよさ、正確さ
総合サロン日によって施術内容が変わる体力と、覚えることへの意欲の両方

体力に不安がある人は、フェイシャルや脱毛が中心のサロンから始めるのも一つの方法です。
自分に合う働き方を知っておくと、面接での受け答えにも落ち着きが出ます。

面接までにできる体力の準備

体力は、面接までの数か月でも少しずつ変わります。

厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」は、成人に向けて次のような目安を示しています。

  • 歩行かそれ以上の強さの活動を1日60分以上(1日約8,000歩に相当)
  • 息が弾み汗をかく程度の運動を週60分以上
  • 筋力トレーニングを週2〜3日

同じガイドは、個人差を踏まえて「今よりも少しでも多く身体を動かす」ことから始めるよう勧めています。
いきなり全部をこなそうとしなくて大丈夫です。

エステの仕事を考えると、私は学生に次の三つをすすめています。

  • 一駅分歩くなど、立って動く時間を毎日少し増やす
  • スクワットのような下半身の筋力トレーニングを週に数回
  • 腕や肩まわりのストレッチを寝る前に

続けた期間が短くても、面接で「始めたこと」として話せます。
入社後の自分を楽にするための準備だと考えてください。

体力と同じくらい大事な「体の使い方」

もう一つ知っておいてほしいのが、施術の負担は体力の量だけで決まらないということです。

美容業界の求人サイトBeAleは、エステティシャンの腕が太くなったり腱鞘炎になったりするのは力の入れ方に原因があるとし、体幹を使って体重移動しながら力を入れるのが正しい施術だと説明しています。

私がトレーナーをしていたときも、腕だけで押そうとする新人ほど先に疲れていました。
足を開いて重心を落とし、体ごと前に乗るように圧をかけると、同じ施術でも腕の疲れ方がまるで違います。
こうした体の使い方は、入社後の研修で一から教わるものです。

面接で「体の使い方も研修でしっかり身につけたいです」と添えると、仕事の大変さを理解したうえで前向きに考えていることが伝わります。

答えなくていい質問もある

運動や体力について聞かれるのは、仕事内容から見て自然なことです。
一方で、面接には聞いてはいけない質問もあります。

厚生労働省の公正採用選考特設サイト「求職者の皆様へ」では、採用選考は本人の適性や能力に基づいて行うべきだとして、就職差別につながるおそれのある14の事項を挙げています。

たとえば次のような質問がそれにあたります。

  • 家族の職業や収入、健康状態など家族に関すること
  • 本籍や出生地、住宅の状況
  • 尊敬する人物、愛読書、支持政党など思想や信条にかかわること

運動経験はこの14の事項には含まれていません。
立ち仕事が中心の職種で体力について聞かれても、身構える必要はありません。
もし家族のことなどを聞かれて困ったときは、ハローワークや都道府県の労働局に相談できると同じサイトで案内されています。

面接前のチェックリスト

面接の前日に、次の項目を確認してみてください。

  • 運動経験を聞かれたときに話すエピソードが一つ決まっている
  • 経験がない場合の言い換え(アルバイト、習慣など)を用意した
  • 「体力に自信はありますか」への答えを声に出して練習した
  • 今続けている体づくりの習慣を一つ言える
  • 立ち仕事や手技の負担について、自分なりに理解している

この五つがそろっていれば、運動の話題が出ても落ち着いて答えられます。

まとめ

エステの面接で運動の話題が出るのは、この仕事が立ち仕事で、手や腕をたくさん使うからです。
面接官は、運動の話を通して、施術についていける体があるか、自分の体を整える習慣があるか、長く続けられそうかを見ています。

運動部の経験がなくても、アルバイトや文化部、日々の習慣に置き換えて話せば十分です。
そして面接までの時間を、体を動かす習慣づくりに使ってください。

面接官が気にしているのは、運動が得意かどうかより、この仕事に体ごと向き合う気持ちがあるかどうかです。
今日のストレッチ一回が、そのまま面接で話せる材料になります。